「ブービー」

12/21もうひとつのブログにupした記事を
こちらでもupします。


blog.goo.ne.jp



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ラソンが嫌いだった。


学校の体育の授業で
無理矢理に走らされる

恒例のマラソンとかは

特に苦手だった。



その日も
私は

学校の外周を走り続ける一団から

一人
コースアウトして

脇道に入った。


まだ田園の残る
田舎道には

ぽかぽかとした
春の日差しを浴びて

たんぽぽが
黄色のかわいらしい花を
咲かせていた。

私は
そのひとつを
手に取り

綿帽子を飛ばしながら

一人で
ぷらぷらと

田んぼの横を流れる
小さなせせらぎに沿って歩いた。


せせらぎは
さらさらと流れ

小さな池へと続いていた。


私は
その池をのぞきこんだ。


すると
うしろから

「あ。水すましがいる。」

と声がした。


私が
びっくりして
振り返ると

彼が立っていた。


こちらの様子も気にせず

私より熱心に
池の中を覗き込んでいる。


「ちょっと!
 どうしたの?
 
 なんでここにいるの?

 陸上部の部長なのに
 マラソンさぼったら
 先生に怒られるよ?」

私が
自分のことを棚に上げて
彼に聞いても

彼は
にこにこと笑いながら
どこ吹く風という感じで

何も答えない。


私は
仕方ないなぁ
と思いながらも


「あ ゲンゴロウだ」

という彼の言葉に

「そう言えば

 前に私が泳げるって言ったとき

  なんで

 “ゲンゴロウみたい”って言ったの?」

とか
彼に問いただし始めると

彼は
あははと
笑った。



それから

池にいる生き物の話とか

傍らに咲く小さな花の
どの色が好きか

とか

とりとめのない話を

私たちはした。


それから

春の
青い空を

二人して

黙って
見上げながら


白い雲の形が

ゆっくりと変わるのを
見ていた。




「そろそろ
 行こっか。」


彼が立ち上がったので

私も
彼について

ゆっくりと歩いた。





学校の校舎が

見えるあたりに来て


彼が背を向けたまま

「走るよ?」

と言ったので


私は

「やだ」

わがままを

言った。


彼は

振り向いて


私の目を

じっと見つめた。


私は

彼の眼を
見つめ返した。





そのとき

春の風が吹いた。



つむじ風に
目を瞑った。




彼のあたたかな
息づかいを

近くに感じた。


私は

息が

できなかった。



目を開けると

彼は
くるり
また

背を向けて。


ゆっくりと
走り出した。


私も

そのあとを

走った。



「 みんなに

  みつかるよ?」

私が
言ったら




「別に いいよ。」


って

彼は

今度は

はっきりと

答えた。



彼の走るペースは

たぶん

いつもの
1/2の速さだ

ゆっくりと

私の走るペースに

合わせてくれている。



前を走る

彼の背中を見ながら
考えた。



彼が

こうやって

一緒に
走ってくれるのは


私が
先生に怒られないためだ。


そして

私も
こうやって

仕方なく走るのは

彼が
先生に

怒られないためでもある。





こうやって

私たちは

罪を重ねた。


二人だけの

秘密の罪だ。


神様は

許してくれるだろうか。



         *         *


罪には

重さがあるらしい。



軽い罪。

重い罪。


小さな

軽い罪が

たくさん集まって

人を死に追いやる場合もある。



         *         *




    ひとをころした  

     軽い罪  

     空に放つ

     
        *          *




二人の

罪は
どのくらいの重さだろう。


誰も殺さない


二人だけの

ささやかな罪を。


甘くて
すこし

すっぱい


そうしなければ

息苦しくて

生きられない時もある


頼りない罪を。



本当の神様は

ちゃんと


見ていてくれるはずだ。



         *        *



    レモン風味   軽い罪  空に放つ



         *        *


神様

どうか


このまま





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2、3日前から

ブービー」の曲の感想を
どういう風に書こうかな

と考えていたときに

浮かんだ

ブービー」 another story的なものを。


ブービー」が男の子目線なので

女の子目線で書いてみました。


曲の感想

というわけではないのですけれども。


先日言っていた
曲の感想を書く順番とは
違いますが

突発的に
書きたくなったので
書きました(笑)


今日はマサムネさんの
お誕生日なので

何を書こうかな
と考えていて。


そうだ
「悪役」について
書こうと
思って

でも
ブービー」についても
書きたい
と思っていて。


昨日←
「優しいあの子」のシングルを
買って来て

実際に
「悪役」を聴いてみて

これは
ブービー」を書いたあとに

「悪役」の感想を
書いたほうが
いいなと
思いましたので


今日は「ブービー」となりました。


なので

「悪役」については

明日書く予定です。



ブービー」を聴いて

最初に
「水中メガネ」を思い出しました。


すごく瑞々しい

春から初夏にかけての季節の

緑の若葉とか

澄んだせせらぎとか。


だから

登場人物も

男の子と
女の子
って感じで。


でも

きっと
大人になっても

変わらないのかもな

っていう想いもあって。


心の

いちばん

清らかな風景の歌だな

って
思いました。




初夏の季節という意味では

アルバム「見っけ」の中で

「初夏の日」という歌も

近いイメージで

聴いていましたが

こちらは

大人になった

男の子と
女の子

という感じがする。



好きな人のそばにいるときの

いちばん
しあわせな

大切な想いが

心いっぱいに広がる。


とても
素敵な歌です。






今年は

素直に

大好きな気持ちを

こめて。



マサムネさん


お誕生日

おめでとうございます。




いつも
遅くて

ごめんなさい。


この文章も

間に合うか。。。。どうだか。(笑)


間に合った?

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2020年01月14日非公開。
2020年01月18日再公開。
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